ストレス性高血圧と運動による抑制効果に延髄孤束核のドーパミンD1受容体が関与することを報告した論文が『Journal of Hypertension』誌に掲載されました
『Journal of Hypertension』誌にストレス性高血圧と運動による抑制効果に延髄孤束核のドーパミンD1受容体が関与することを報告した論文が掲載されました。
Yamanaka K, Suzuki M, Pham LT, Tomita K, Van Nguyen T, Takagishi M, Tsukioka K, Gouraud S, Waki H. Involvement of D1 dopamine receptor in the nucleus of the solitary tract of rats in stress-induced hypertension and exercise. J Hypertens. 2024 Jul 5. doi: 10.1097/HJH.0000000000003809. Epub ahead of print. PMID: 38973449.
慢性的なストレスは高血圧を誘発し、習慣的な運動はこのような高血圧発症に対して拮抗的な作用を示します。 本研究はこのようなストレス性高血圧の発症と運動による抑制効果の神経機序として、延髄孤束核におけるドーパミンD1受容体に着目したものです。 最初にストレス性高血圧モデルのラットの延髄を摘出し、PCRアレイ解析を行っていくつかの関連する受容体遺伝子を同定しました。本研究ではその中から、運動とも関連の深いドーパミンD1受容体遺伝子(Drd1)に着目し、タンパク質レベルでもストレスで増加し、運動で減少することを見出しました。 最後に、延髄におけるドーパミンD1受容体が循環応答に対してどのような役割を担っているか調べるため、麻酔下ラットの延髄孤束核にドーパミンD1受容体作動薬を注入し、血圧が低下することを確認しました。 このような結果から、ストレスによって延髄孤束核のドーパミンD1受容体の発現量は増えるが、その増加は血圧を上げるものではなく、むしろストレス性高血圧を抑えるように補償的に働くものではないかと考察しました。 また、延髄孤束核のドーパミンD1受容体刺激に対する血圧低下効果は、ストレスなし群、(発現量が増加しているにもかかわらず)ストレス群、ストレス+運動群でも有意な差が見られなかったことから、ストレス群においては延髄孤束核のドーパミンD1受容体の感度が低下している可能性が示唆されました。